2019年2月の絵本



「いろ」 作・絵:いもとようこ


「おおゆきくまちゃん」 作:シャリ―・パレント・絵:ディビット・ウォーカー・訳:福本由美子


「うさぎちゃんとゆきだるま」 作:はいはらひろゆき・絵:あだちなみ


「ないた赤おに」 作:浜田廣介・絵:いもとようこ


 絵本の紹介

「ないた赤おに」

   『ないたあかおに』 といえば、絵本好きな方にははずせない1冊、浜田廣介の有名な童話です。 作者は浜田さんですが、この絵本の絵をいろんな絵描きの絵本作家さんが描いています。 梶山俊夫さん、池田龍雄さん、その他にも何人か描かれています。 梶山俊夫さんの絵が有名ですので、皆さんの手元にもきっと一冊あることでしょう。 私も絵を描いた作者違いで『ないたあかおに』の童話の絵本を、3冊持っています。
梶山さんの絵のものは、『泣いた赤おに』偕成社
池田さんの絵本の題名は『ないたあかおに』偕成社
そして、このいもとさんの題名は『ないた赤おに』金の星社
の3冊です。

   絵としては梶山俊夫さんのものが一番迫力に富み、内容も童話らしく読むことができます。 池田龍雄さんのものは、後書きに作者浜田廣介さんが、子どもにもわかりやすく読めるように文を平易にしたと書いています。 その3冊の中で、今回はいもとようこ作のものをお話しましょう。

   いもとようこが描いた、金の星社が編集した『ないた赤おに』は、幼稚園や保育園、こども園の子ども達にむけて読むのには、絵のタッチが温かい雰囲気で、"鬼がこわい"と子ども達にむけて読んでもこわがることなく、この絵本に親近感を持ってみてくれるのがいい点です。しかし、それは、"鬼"はこわいのもの、これでは本末転倒とこんな鬼の絵本はダメだ!と、批判する方もいることでしょう。でも、いもとワールドの絵本としては、この赤鬼の絵の表情やしぐさやさしいタッチは、幼児向けとしては適していると思っています。いもとようこのものを先読んでそのあと、梶山俊夫さんのものを読むというやり方もいいのではないかと思います。絵の印象を楽しむこともできます。

   これでなくてはダメ!という偏見を持たずに、子ども達が"絵"に対してどんなふうに反応をするかを見るのも、絵本を読み楽しむ醍醐味につながるのではないでしょうか。

   さて、偏見を持たずにということを書いたのは、浜田廣介さんのご親戚の方から『ないたあかおに』についての話を聞いたためです。 『ないたあかおに』といえば、光の森こども園の近所に東京から浜田さんのおいごさんと言う方が引っ越してきました。 その人が『ないたあかおに』かじやまとしおさんの絵の本を持って園にやってきました。その方から浜田廣介さんのお話を伺いました。 みなさんも名前を聞けばよく知っている高名な作家より、『ないたあかおに』のストーリーのことを、手厳しく公に批判をうけたそうです。 単純明白な話で、文学としてのレベルが低いということを言われ、浜田廣介さんが大そう落胆し、心を痛めたという事でした。 高度成長期の日本においては、昔ながらの勧善懲悪だったり道徳的なお話が、文学性が低いと軽視される風潮だったようですが、創造性が低いなどと童話が軽視されることは、はなはだ遺憾であると思います。 心優しい童話を書く浜田さんの心情をくむことができなかった高名な作家こそ、貧しい心の持ち主ではないでしょうか。 『ないたあかおに』は、これから先ずっと、優れた名作として、友情の尊さを伝える絵本として、ずっと残っていく不朽の名作です。 批判した方の判断基準こそが誤っていたのです。 天国の浜田さんは、今もこうしてみんなが『ないたあかおに』を読みつないでいることに、きっと心より安堵し、平穏な気持ちをとりもどしているにちがいありません。

   さて、もうすぐ節分です。子ども達にこの絵本を読みたいと思っています。 子ども達はどんな感想をいだくでしょうか。



(作:浜田廣介・絵:いもとようこ 出版社:金の星社)






光の森こども園

社会福祉法人山宮保育会が運営する幼保連携型認定こども園です。

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